トレンド解説

東京の未来不動産の未来開発が不動産のニーズを変える

不動産テック

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東京の未来 不動産の未来 開発が不動産のニーズを変える

東急リバブル株式会社
ソリューション事業本部
営業統括部 法人営業第一部長
関口 良介

東急不動産ホールディングス株式会社
グループソリューション推進部 兼
東急不動産株式会社
ソリューション推進部
統括部長
小川 和孝

2020.03.25

東京大改造の時代である。渋谷地区や虎ノ門地区では開発計画が形になって現れ始め、1980年代に話題を呼んだウオーターフロントには再び注目が集まりつつある。
エリアに新しいニーズを生み出すこれらの開発をどう捉えるか――。
東急不動産ホールディングス傘下で不動産を保有する企業へのソリューション提案を手掛ける東急リバブルと東急不動産の事業担当者に話を聞いた。

――東京中心部では各地でエリア開発が進んでいます。注目されているエリアはありますか。

小川 一つは湾岸エリアです。住宅に対する需要は根強いですね。当社が関わっているプロジェクトには、豊洲で商住複合開発で48階建てのタワーマンションであるブランズタワー豊洲が、販売中です。2020年には都心と臨海部を直結するBRT(バス高速輸送システム)が開通予定と報道されており、同エリアの交通利便性の向上に期待しています。

関口 そうですね。湾岸エリアには注目しています。東京中心部では大規模なエリア開発の見込める余地が限られるようになってきましたが、それでも湾岸エリアにはまだ開発の余地が見込めますね。

小川 湾岸エリアをさらに細かく見れば、市場跡地の広がる築地エリアや開発余地の残る臨海副都心エリアが今後どうなるのか、それも要注目です。

――湾岸エリアには東急不動産が事業者として名を連ねる竹芝地区も含まれます。地区内のオフィスビルには大手通信企業が本社を移し、地区全体をスマートシティとしてエリア内でデータ活用にも乗り出す予定です。

小川 このエリアはもともと来訪者が多くなく、竹芝ふ頭を利用する人が中心でした。そこに「東京ポートシティ竹芝」が開業する予定です。この計画は、東京都の「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の一つとして、国家戦略特別区域計画の特定事業における整備方針に基づいた複合再開発であり、新たな国際ビジネス拠点が創出されることになるでしょう。
 街全体で最新のテクノロジーを活用するスマートシティの実現と新たなにぎわいの創出や地域コミュニティの形成を目的に、企業や行政機関などの関係者と連携したエリアマネジメント活動が挙げられます。

竹芝地区で東急不動産が鹿島建設と共同で開発する東京ポートシティ竹芝の周辺イメージパース。左の超高層ビルがオフィスタワー。2020年開業を見込む

――東急不動産ホールディングスグループで言えば、渋谷は外せません。駅周辺の再開発ビルが開業し、地下鉄銀座線のホームも移設が完了しました。

小川 百年に一度と言われている渋谷の再開発ですが、生活文化の創造・発信拠点、交通結節点機能の強化などによる快適な歩行環境、渋谷らしさをもった景観形成などを目指した街づくりが進んでいます。現在はオフィス床が整備され、IT企業の入居が目立つようになり、幅広い年齢層の方々や海外の観光客を含め、今まで以上ににぎわいが感じられるようになりました。

関口 これまで渋谷はオフィス床が限られ、企業の業容拡大などにも対応できていませんでしたからね。その点が改善されたことでオフィス需要が高まり、渋谷は周辺エリアを含めて今後さらなる活性化が期待されます。

小川 グループでは、渋谷を中心に原宿や恵比寿などの一帯を都市開発の重点拠点と位置付けています。駅周辺の再開発に触発され、同エリアで複数の開発案件が立ち上がってくることに期待しています。
 駅周辺の再開発は共同化の成功例と言えます。不動産を保有する方々にも、街の変ぼうを実感されることで開発意欲が高まるのではないでしょうか。

関口 渋谷は、オフィスや商業はもちろん、エンターテインメント、ホテル、住宅など、多様な用途が開発事業として成り立つ場所です。そうした渋谷の多様さが、駅を中心とする一帯の整備によってこれまで以上に広がりを見せるようになっていくと考えられます。渋谷周辺で開発を検討する企業にとっては、選択肢が広がるわけです。

――エリア開発という点では、JR 田町駅から品川駅にかけての一帯でも、JR高輪ゲートウェイ駅が新設され、駅前整備が計画されています。この一帯の将来性はどうご覧になりますか。

関口 JR田町駅東口に広がる東京工業大学田町キャンパスで複合施設の開発が計画されています。その土地活用事業がどのようなインパクトをもたらすのか、関心を寄せています。

小川 どういった用途の施設が進出するか興味深いですね。いずれにせよ、既存施設との相乗効果による街の活性化に期待しています。

――これらのエリア内では不動産の価値が上がっていくと考えられます。活用にしても売却にしても好機です。不動産活用を検討する企業にはどのようなアドバイスを送っていますか。

関口 エリア開発の進む都心部にも小規模な低利用地はまだまだ残されていて、有効利用されていない不動産は少なくないと思います。そうした不動産を保有するお客様に対しては、周辺との共同化を提案しています。
 今、デベロッパーの購入意欲は非常に高いとはいえ、20坪程度の狭い土地では買おうとしません。それなりの規模が必要で、50坪程度までまとまれば可能性が開けます。不動産の価値は周辺との共同利用によりぐんと高まります。

小川 不動産の活用ニーズも高いですね。景気の先行き、本業の将来を不安視している企業もいます。そこで資産を活用し、第二、第三の収益源を確保したい、というニーズが高まっていると思います。そうした企業には、当社でも共同化を提案することがあります。周辺を巻き込み共同利用化を図れば、様々な開発制度を活用できる可能性が出てきます。それらを活用し最有効利用を図ることで、収益力の向上が期待できます。

――2020年以降の経済環境を不安視する向きもあります。売却にしても活用にしても、今の時期はそれらのタイミングとしてどのように評価すればいいのでしょうか。

小川 いろいろな不安材料はありますが、現状の堅調な経済環境、低金利政策などを考えると、今が不動産ソリューションを考えるには適した時期と言えるのではないでしょうか。

関口 不動産価格はピークに達していると言っていいと思います。これからまだ上がったとしても、上げ幅は限られるでしょう。そういう意味で、今はエリアによっては売り時と言えるのではないでしょうか。実際に不動産の取引に関わり、様々なプレーヤーの話を聞く中でそう実感しています。
 開発によって人の流れが変わることで、周辺エリアには新たなニーズが生まれます。所有されている不動産の売却や活用を検討される際には、そのようなポイントに注目して戦略を立てることが重要です。

※本記事は日経ビジネス2020年2月24日号掲載の記事からの転載です。

※所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。