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【2022年】人口動態から見える
不動産ニーズ(エリア)の変化とは?コロナ禍による変化なども解説

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【2022年】人口動態から見える不動産ニーズ(エリア)の変化とは?|コロナ禍による変化なども解説

コロナ禍の影響は経済だけでなく人々の生活場所や暮らし方、出生率等にも影響を与えています。また、個人の住宅ニーズだけでなくオフィスなどの事業用不動産のニーズも大きく変化してきました。
本記事では人口動態と不動産動向についてエリア別に見ていきながら、コロナ禍で変化した住まい方や働き方についても解説します。

目次

  1. 2022年の全国の不動産動向
    1. 【全国】人口動態(自然増減数)
    2. 【全国】住宅の不動産価格指数
    3. 【全国】オフィスなど事業用不動産の不動産価格指数
  2. 2022年のエリア別に見る不動産動向
    1. 【エリア別】人口動態(自然増減数・人口移動)
    2. 【エリア別】住宅の不動産価格指数
    3. 【エリア別】オフィスなど事業用不動産の不動産価格指数
  3. コロナ禍でニーズはどう変わった?
    1. 移住や二拠点生活の普及
    2. サテライトオフィスやワーケーションの普及
  4. 住まい方や働き方の変化を捉えた戦略を練ろう

2022年8月31日に国土交通省から公表された不動産価格指数から、全国の不動産価格の動向を考察します。厚生労働省の人口動態も参照し、コロナ禍や少子高齢化などの影響と不動産価格についても触れていきたいと思います。

2021年は出生数が811,604人(対前年▲29,231人)、死亡者数が1,439,809人(対前年+67,054人)となっており、人口全体で628,205人減少し、減少幅は前年より96,285人拡大しています。

新型コロナウイルス感染拡大や新型コロナウイルス対応の影響による医療体制の混乱などから、出生数の減少幅拡大と死亡者数の増加が大きくなったことが人口減少の原因と考えられます。

2022年8月31日に公表された2022年5月の不動産価格指数は、2010年平均を100とした指数が住宅総合で130.9と前年同月比11.4増(住宅地+7.4、戸建住宅+9.1、マンション区分所有+17.6)となっています。

人口は減少傾向にあるものの全国の住宅総合不動産価格指数はコロナ禍の2020年に入っても減少しておらず、むしろ2021年後半からは増加傾向となっています。これらの要因として考えられることとしては、新型コロナウイルスの影響でモデルハウス見学会などが減少し一時的に住宅減少となった反面、在宅時間が増えたことで家づくりへの憧れやこだわりが増加し、住宅需要増につながったことが考えられます。

なお、不動産価格指数は2021年に動きのあった資材高(ウッドショック)や、2022年に発生したウクライナ侵攻による資源価格の上昇、人件費の高騰などにより今後さらに上昇する可能性があります。

一方、オフィスや店舗などの商業用不動産総合においても、2022年第一四半期の不動産価格指数は127.3と前年同期比4.58増となっており、オフィス150.3(+4.48)、店舗143.1(+7.54)、倉庫112.5(▲0,64)などとなっています。

全国のオフィス不動産価格指数は2020年に入り一旦減少しましたが、2021年以降は持ち直しており、店舗など他の商業用不動産と比べると高くなっています。これは2020年、2021年のコロナ禍を経て、サテライトオフィスやワーケーションなど交えた、オフィスの立地戦略を持つ企業が増えたことが要因と考えられます。

2022年以降においても在宅勤務と出社を組み合わせた働き方がより一般的になり、移転を検討する企業が増えることが予想され、この動きが人口動態や住宅、オフィスなどの不動産価格に影響を及ぼす可能性があります。

ここでは国土交通省から公表された不動産価格指数と厚生労働省の人口動態について、エリア別にどのような変化が生じているのか考察します。

前述の通り全国の人口動態(自然増減数)は2021年で628,205人の減少となっており、特に東京(32,176人減)や大阪(37,503人減)において自然減数が多くなっています。

関東圏は人口の母数が多いため、人口減少人数が多くても減少率では小さくなりますが、都心部(東京都区部)での自然減数は2018年2,756人、2020年8,334人、2021年16,079人とコロナ禍により増加しており、これは婚姻件数が2018年64,253件、2020年57,796件、2021年54,376件と下がっている傾向とも関連があると推測されます。

人口移動に関しても、2021年は三大都市圏の転入超過が65,873人に減少(前年比▲15,865人)となっています。なお2021年の国内における市区町村移動者数自体も前年比0.2%減少しているので、国内全体として人の動きがやや鈍化している傾向が見られます。

これは、企業における働き方の変化による転勤の減少や、上京就職の減少等による影響が考えられ、これらの人の動きが不動産価格にも影響していると考えられます。

2022年5月の不動産価格指数についてエリア別に見てみると、住宅総合で関東地方は135.3(前年同月比16.1上昇)、中部地方109.7(前年同月比5.0上昇)、近畿地方131.9(前年同月比9.3上昇)、九州・沖縄地方133.2(前年同月比7.6上昇)となっています。

東京圏への人口流入数は2021年に大きく減少している一方、神奈川など一部地域は流入数が増加傾向にあります。現在はまだ数字に表れていませんが、東京など人口流入数が減っている地域は空室率が上昇傾向にあります。

株式会社タス社が公表している空室率TVIによると東京都23区内の2022年6月の数値が10.50(コロナ渦直後の2020年6月比0.87上昇)となっており、賃貸住宅の需給バランスの調整から今後家賃減少や投資物件価格下落などにつながる可能性があります。

※出典:首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版 2022年6月|株式会社タス

事業用不動産については、2022年第一四半期の不動産価格指数をエリア別に見てみると、商業用不動産総合の前年同期比が三大都市圏は5.1上昇、三大都市圏以外は5.6上昇となっています。

三大都市圏以外については特に2020年に大きく下がりましたが、2021年以降は持ち直しています。事業用不動産においては今後リモートワーク、サテライトオフィスなどの普及により、郊外への転居や複数拠点を移動するなど人の流れに変化が起こりうるでしょう。結果として、東京など都心でのオフィス需要へ影響が及ぶ可能性があります。

コロナ禍によって元々減少傾向であった人口がさらに大きく減少したことや、人の移動が制限されることなどでリモートワークが普及し、東京圏等への流入数が減少するなど、コロナ禍は人の動きに大きな影響を及ぼしました。

生活スタイルの変化により住宅指数が上昇していたり、オフィスにおいては一時的に指数が下降したものの、その後上昇したりするなど、分野や地域ごとに異なる動きを示しています。

働き方の多様化に伴い以前からリモートワークなどを実施している企業はありましたが、コロナ禍によってさらに普及が加速しました。

その結果、東京一極集中の傾向が緩和され地方に住みながらでも働きやすい環境が整ってきています。

地方への移住はもちろんのこと、定住しないライフスタイルや二拠点生活のように複数拠点を行き来する生活など、生活の形が大きく変化しています。

総務省が2021年10月29日に公表した「地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設数(※)」によると、令和元年度末時点でのサテライトオフィス開設数は710箇所、令和2年度には263箇所が開設、57箇所が減少し、令和2年度末時点でのサテライトオフィス開設数は916箇所となっています。

これは企業においてサテライトオフィスやワーケーションなど導入を進めるケースが増えたことが主な要因と考えられます。

地方においては新たな企業の進出によって、移住者の増加、地元の人の雇用機会の創出、交流人口・関係人口の拡大、空き家・空き店舗の活用などのメリットがあり、地元企業との連携による新たなビジネスの創出や離職率低下など企業側のメリットもあります。

(※)調査対象は地方公共団体が誘致または関与したオフィスに限られるため、全てのサテライトオフィスの実態を示すものではありません。

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2022年に入り不動産価格指数は全国的に回復傾向にあります。一方で人口の自然減は過去最高となっており、今後地価への影響も懸念されます。

不動産の活用を考えている場合はコロナ禍による住まい方や働き方の変化、エリアごとの変化等を捉え、投資戦略を策定することが重要となるでしょう。

日商簿記 1級、税理士試験 3科目合格(簿記、財務諸表、消費税)、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、プロフェッショナルCFO
大間 武 氏
TAKESHI OMA

飲食業をはじめ多業種の財務経理、株式公開予定企業などの経理業務構築、ベンチャーキャピタル投資事業組合運営管理を経て、2002年ファイナンシャル・プランナーとして独立。
「家計も企業の経理も同じ」という考えを基本に、「家計」「会計」「監査」の3領域を活用した家計相談、会計コンサル、監査関連業務、講師・講演、執筆など幅広く活動。