クリエイティブオフィスとは?
メリットや導入のポイントなど解説
#オフィス
#リモートワーク
最近、グリーンオフィスやリフレッシュスペースを取り入れたオフィスが増えています。コロナ禍をきっかけとした働き方の変化(テレワークの普及など)によりオフィスの意味・意義が問われるようになり、新しいオフィスの形としてこのような「クリエイティブオフィス」に注目が集まるようになりました。
働き方改革や従業員満足度向上という側面に加え、仕事に知的創造性が求められることが増えてきたことも、クリエイティブオフィスの需要が増えている要因です。本記事では、クリエイティブオフィスのメリットや導入のポイントなどについてご紹介します。
目次
1. クリエイティブオフィスとは
クリエイティブオフィスとは、社員(ワーカー)が知識を基にした創造的な活動(知的創造行動)を起こしやすくする環境(仕掛け)が戦略的に配置されたオフィスのことをいいます。
経済産業省はクリエイティブオフィスを「知識創造行動を誘発する、空間・ICTツール・ワーカーへのはたらきかけと、組織の目標とプロジェクトのゴールに向けたマネジメントの双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した “場”」と定義しています。
「知識創造行動」は12の知識創造行動をまとめた「SECIモデル」という経営学の概念で定義され、①Socialization(共同化)、②Externalization(表出化)、③Combination(連結化)、④Internalization(内面化)と大きく4項目に分けられています。
①Socialization(共同化) | 1 ふらふら歩く。 |
---|---|
2 接する。 | |
3 見る。見られる。感じあう。 | |
②Externalization(表出化) | 4 軽く話してみる。 |
5 ワイガヤ・ブレストする。 | |
6 絵にする。たとえる。 | |
③Combination(連結化) | 7 調べる。分析する。編集する。蓄積する。 |
8 真剣勝負の討議をする。 | |
9 診てもらう。聴いてもらう。 | |
④Internalization(内面化) | 10 試す。 |
11 実践する。 | |
12 理解を深める。 |
クリエイティブオフィスは上記のような行動を促し、創造性を高めることを目的としたオフィスです。
1.1. デザイナーズオフィスとは違う?
「デザイナーズオフィス」はクリエイティブオフィスと近いイメージで捉えられがちですが、デザイナーズオフィスの場合は見た目のデザインを重視するオフィスを意味するため、同じものではありません。
クリエイティブオフィスは単にデザイン性のあるオフィスや快適なオフィスではなく「知識を生む空間・場」と考えられており、働き方や経済の変化に伴う次世代のオフィス(オフィス3.0)として重要視されています。
1.2. CRE戦略としてのクリエイティブオフィス
「CRE」とは「Corporate Real Estate」の略で、直訳すると「企業不動産」という意味です。CREは企業が保有している不動産すべてのことを指し、事業を行うためのオフィスや工場、倉庫、保養所や社宅、福利厚生施設、遊休地なども含まれます。
CRE戦略は、経営戦略として導入する企業が増えている重要なテーマであり、企業が所有する不動産を効果的に活用することで、企業価値の向上を図るための中長期的な経営戦略です。
クリエイティブオフィスはこのCRE戦略の一つと捉えられます。不動産の有効活用を図ることによって社員が知識を基にした創造的な活動を起こしやすくする環境を作り、企業業績向上、企業価値向上へとつなげていくためです。
関連記事:CRE戦略とは?不動産で企業価値を高める中長期的な戦略を詳しく解説
1.3. 働き方の変化が空室率にも影響
近年特にクリエイティブオフィスが注目されるようになった背景としては、働き方の変化が挙げられます。
2018年6月に成立した「働き方改革関連法」により柔軟で多様な働き方を選択できる流れとなってきたところで、コロナ禍でさらにテレワークの普及などが加速したことによって、オフィス賃貸借契約解除など、オフィスの空室が増加しています。
例えば東京都心エリアにおける平均空室率の変化を見てみると、コロナの影響を受ける前の2020年2月は1.49%であったものがその半年後の2020年8月には3.07%と倍増し、直近の2022年6月には6.39%と、コロナの影響前の2020年2月と比較して4倍超空室率が上昇しています。
このことから、オフィスの意義・意味が改めて問われており、クリエイティブオフィスのように付加価値のある事業所が求められるようになりました。
働く人の価値観も、「出社しなくてもできる仕事なら在宅で良い」という方向に変化しつつあります。そのような環境下で、オフィスは仕事の場所を提供するだけでなく、出社することがメリットとなるような価値をもたらす場として今後もアップデートが必要とされるでしょう。
空室率参考:三鬼商事(株)Web公開データ
2. クリエイティブオフィスを導入するメリット
ここでは、クリエイティブオフィスを導入するメリット3つについて解説します。
2.1. 導入メリット1:知的創造性を高める
空間や導線の作り方を工夫することで、創造性が高めやすくなる点はクリエイティブオフィスの大きなメリットです。
例えば、デスクのフリーアドレスを採用すれば、これまで交流することのなかった他部署の人と頻繁にコミュニケーションが行えるようになります。このことにより新しいアイデアが生まれるきっかけともなるでしょう。
フリースペースにソファを設置するなど、仕事の合間にリフレッシュできたり会話が生まれやすくなるスペースを設けるのも効果的です。
2.2. 導入メリット2:仕事が効率化される
社員同士がお互いの様子を把握しやすいオフィスであれば、適切なタイミングでサポートしあえるなど、仕事の効率化につながります。
パーテーションがなくフロア内を見通せるオフィスなど、他部署の動きも把握しやすい構造であれば、部署を超えた連携もしやすくなるでしょう。
また、前述のようにフリーアドレスを実施する場合、自分専用のデスクや引出しがなくなるため常に資料や荷物を整理しておく必要があります。整理整頓が習慣化すれば、資料探しなどに時間を使うことがなくなり、効率的に動けます。
2.3. 導入メリット3:モチベーションアップにつながる
前述のようにオフィス内でのコミュニケーションが生まれやすい空間であれば、お互いの成果も耳に入りやすくなります。社員同士がお互いに刺激を与えあうことで、モチベーションアップにつながるでしょう。
また、快適な空間で働ければ、社員が仕事に対してポジティブに取り組みやすくなることも期待できます。
3. クリエイティブオフィスを導入するためのポイント
ここではクリエイティブオフィスを導入するためのポイント3つを解説します。
3.1. ポイント1:レイアウトの工夫
クリエイティブオフィスにおいては、デスクの配置やミーティングルームの確保など、レイアウトの工夫が必要となってきます。
単にデスク等の備品を新しくしたり、内装を変えたりするだけでなく、オフィス全体の導線を意識することが重要です。デザイン性だけでなく実用性も考慮し、働きやすさを優先して設計を行いましょう。
3.2. ポイント2:ICTの活用
クリエイティブオフィスは、自分の席が決まっていないフリーアドレスや会議室、ミーティングルームなど社内を自由に移動して仕事を行う設計にすることが大半です。
パソコンやスマホ、タブレットなどツールの導入はもちろんのこと、社内のどこからでもインターネットにつながる通信環境の整備が重要となってきます。
3.3. ポイント3:社員へ浸透させるための働きかけ
単にクリエイティブオフィスを導入するだけでなく、導入の意味・意図を含めてしっかりと社員に説明することが重要です。
オフィスの改装にあたっては、新しいルールの制定が必要になることもあるでしょう。従来のオフィスに慣れた社員からすれば面倒に感じたり、使い勝手が悪いと思われたりする可能性もあります。
社員が改装の意図を知らされず意識が変わらなければ、クリエイティブオフィス導入の効果が半減することもありえます。
なぜその設計にしたのか、どのような目的があるのかを共有しておけば、社員からの理解も得やすくなるでしょう。
4. CRE戦略の一貫としてクリエイティブオフィス導入を検討してみよう
クリエイティブオフィスは見た目のデザインを重視するデザイナーズオフィスとは異なり、単におしゃれなだけでなく知的創造性を高めるオフィスです。
クリエイティブオフィスをCRE戦略の一貫として導入することで企業価値向上に貢献することが期待されますが、導入する際にはレイアウトや導線の工夫、ICT活用の他、社員へ浸透させるための働きかけをしっかりと行いましょう。
日商簿記 1級、税理士試験 3科目合格(簿記、財務諸表、消費税)、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、プロフェッショナルCFO
大間 武 氏
TAKESHI OMA
飲食業をはじめ多業種の財務経理、株式公開予定企業などの経理業務構築、ベンチャーキャピタル投資事業組合運営管理を経て、2002年ファイナンシャル・プランナーとして独立。
「家計も企業の経理も同じ」という考えを基本に、「家計」「会計」「監査」の3領域を活用した家計相談、会計コンサル、監査関連業務、講師・講演、執筆など幅広く活動。