取引事例

東急リバブルのプロジェクトマネジメント(PJM)で2022年7月「カンデオホテルズ熊本新市街」が開業
お互いの強みを融合させ域内トップクラスのADRを実現

ホテル・宿泊事業

対談

東急リバブルのプロジェクトマネジメント(PJM)で2022年7月「カンデオホテルズ熊本新市街」が開業
              お互いの強みを融合させ域内トップクラスのADRを実現

株式会社カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント
代表取締役会長兼社長
穂積 輝明

東急リバブル株式会社
ソリューション事業本部
事業戦略統括部
事業戦略部長
菊池 秋雄

2022年7月10日、熊本市中央区新市街のホテル・店舗からなる複合施設に「カンデオホテルズ熊本新市街」が開業した。このプロジェクトは、総合不動産流通業の東急リバブル㈱のPJMにより進められたもの。同ホテル開発の経緯について、㈱カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント代表取締役会長兼社長の穂積輝明氏と東急リバブル㈱ソリューション事業本部事業戦略統括部事業戦略部長の菊池秋雄氏に聞いた。

――昨年7月に「カンデオホテルズ熊本新市街」を開業されましたが、プロジェクト全体の概要および開発の経緯を教えてください。

菊池 このプロジェクトは地上12階建てのホテル・商業施設からなる複合施設で、熊本市を代表する商業拠点の新市街アーケードに面しています。敷地面積約765坪、延床面積約5000坪で、1〜2階が商業施設、3〜12階が「カンデオホテルズ熊本新市街」で、東急リバブルがPJMを手掛けました。
 本プロジェクトは18年前に地元誠ホーム様より物件をご紹介いただいたことが始まりでした。当初はアーケードに面する200坪の土地情報でしたが、立地のポテンシャルを高めるため、その後1年かけて現在の敷地まで土地を追加買収し、当時は商業・オフィスビルを開発する前提で投資家様とプロジェクトを立ち上げました。しかし着工前にリーマンショックにみまわれ開発を断念し、今回の建物の施工会社でもある地元光進建設様に土地を取得していただき、長年にわたり時間貸駐車場として保有していただきました。
 その後、2017年ごろになってインバウンドが急増したことを機に、事業内容をホテル開発に改め再度チャレンジしようとなったわけです。ホテルの選択に当たっては、特徴のあるホテルを誘致したいと考え、スカイスパなど斬新な施設運営をされているカンデオ様に声を掛けました。実は新橋のカンデオホテルも東急不動産が開発しており、好条件で出店していただいたことを存じていたので、当ホテルも強い目線の賃料を提示していただけるのではという期待感もありました。

――カンデオホテルズ熊本新市街の特徴についても教えてください。

穂積 当ホテルは客室数380室と熊本県内では最大級で、カンデオホテルズとしては全国で24店目の出店となります。最大の特徴は、最上階に設けた展望露天風呂やサウナ付きのスカイスパです。展望露天スペースの中にサウナ室を配置するのは当社で初めての試みで、熊本市内随一の眺望と四季による整え方の変化を楽しめるというコンセプトになっています。
 また、当ホテルはラグジュアリーホテルとビジネスホテルの中間領域をコンセプトとしており、ラグジュアリーホテルに近い滞在をリーズナブルな価格でかなえられることも“売り”です。客室もグレードの高い設えで、平均21㎡のツインを主体に、30㎡を超えるトリプルやクアトロ、スイートもあり、多彩なニーズに対応できるのも強みです。こうしたタイプの客室は域内にありませんでしたので。

――カンデオホテルズはどのような理由から出店を決めたのでしょうか。

穂積 当社は2007年に1号店の「菊陽熊本空港」と2号店の「大津熊本空港」を開業し、その頃から熊本市内にも出店したいという強い思いがありました。実際に案件を探す中で、当時はまだ駐車場だった当ホテルの立地に、市内に出店するならこの場所だと狙いを付けていました。でも、まさかその土地で実際に誘致のお話をいただけるとは。ご縁だと感じ、即決でした。
 実は、当社はこの条件で賃料を出してくださいというオペレータービットにはあまり参画しません。それでは一方通行になってしまいますから。本件はお互いのニーズを合わせる対話ができましたので、結果的に特徴のあるホテルになりました。2号、3号もぜひ、というお話をしています。

――開業までを振り返り、苦労されたところはどんなところでしょうか。

菊池 これまで当社がホテルを誘致するときは、賃料がいくらで何部屋取れるかなど経済面を優先していましたが、カンデオホテルズには出店基準があります。部屋の設えを含め計算しつくされていて、ハード部分にもたくさんのノウハウをお持ちです。一番眺めのよい最上階にフロントやレストラン、スカイスパを設け、客室も2700mmの天井高を確保し、通常より大きな窓を設けるなど。
 しかし、熊本市内は熊本城の景観を守るために建築物の高さ制限がありました。カンデオホテルズのスタンダードを満たすプランで容積を消化しようとすると、基準の高さに収まらないという問題が生じたのです。そこで当社は、なんとか制限を緩和できないかと熊本市と交渉を始めました。熊本市は震災後、まちなか再生プロジェクトが立ち上がっていたのでそこに目をつけたのです。その結果、当プロジェクトは公開空地を設けることで、高さ制限が緩和される第一号案件として特例承認を得ることができました。

穂積 当社は他社よりも高い客室単価とGOPをとることでオーナーにも高い家賃を払うというビジネスモデルです。それにはいかに付加価値を打ち出せるかが課題になります。熊本は380室と大型の案件です。市内ではホテルが供給過剰で、その中で勝つには階高が非常に大事でした。今回は高さ制限の緩和を受けられたことでロビーの天井高も上り、ロビーやスカイスパから熊本城を望む眺望というこの場所ならではの付加価値を獲得できました。
 本当に東急リバブルさんの不動産加工能力の高さに驚きました。難易度の高い土地をしっかりと形にし、建築プロジェクト全体をトータルでマネジメントして、テナント部分も最適化されるなど、創意工夫が凄まじいのです。総合不動産のノウハウがある大変頼もしいパートナーだと感じました。

――現在の経営状況はいかがですか。

穂積 もともとは、カンデオホテルズで先行していたシティホテルとビジネスホテルの中間クラスと考えていたのですが、規格をよくしていただいたので現状では、ADR、RevPARともに域内でトップを取れています。競合のビジネスホテルの客室15㎡が1万円のところ、当ホテルは21㎡を1万5000円〜1万8000円、週末は2万円以上で売ることができているので独自のポジションをつくりつつあると感じています。当社では域内に既存ホテルがある場合、少し上に入って地域全体が盛り上がることを望んでいます。そういう流れが熊本では確立しつつあると思います。

菊池 当社としても想定以上のトラックレコードを積んでいただき、大変光栄に受け止めています。

穂積 当社では計画PevPARを三年越しで達成していくため、初めにエリアトップのADRポジションをつくって稼働を合わせていくという方法を用いています。ADRについては計画以上で推移しており、ハードのよさがお客さまにも響いているからだと思います。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

穂積 現在、建築中を含めて29棟6000室展開が見えていますが、一つの節目として国内1万室まで増やしていく計画です。しかし、全体で見ると日本のホテルマーケットはオーバーストアです。お客さまのニーズがあり、他社がやらないことを突き詰めていかなければなりません。当社はニッチな中間領域を舞台に、一ホテルごとに作り込むブティック型の開発で差別化のレベルをさらに上げてオンリーワンを目指していく考えです。

菊池 当社は現在、ホテル以外にも、大型物流施設やメガソーラーの開発等、さまざまなアセットに対応したプロジェクトマネジメント事業を手掛けています。今後も企業や投資家に対する優良な投資機会の創出に努めてまいりますのでぜひご期待ください。

カンデオホテルズ熊本新市街

所在地
熊本県熊本市中央区新市街8番7号(住居表示)
所有会社
合同会社ブルトン
経営会社╱運営会社
㈱カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント
契約形態
定期建物賃貸借契約
建築╱設計╱デザイン
㈱コイケデザインワークス/㈱サラデザイン
内装
デザイン
㈱プレステージジャパン(TIME&STYLE)
施工
光進建設㈱
PJM
東急リバブル㈱
客室構成
全380室
付帯施設
スカイスパ(最上階大浴場、露天風呂、サウナ)
敷地面積
2,527.02㎡
延床面積
16,536.28㎡
客室料金
1室2名10,000円〜

※本記事は週刊ホテルレストラン2023年3月24日号掲載の記事からの転載です。
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。